「最近、胃がキリキリ痛む……これって胃潰瘍? それともまさか……」

胃の不調を感じたとき、ふと「胃がん」の二文字が頭をよぎり、不安になったことはありませんか?
胃潰瘍と胃がんは、名前も性質も全く異なる病気ですが、実は症状が非常に似ているため、自分自身の感覚だけで見分けるのはほぼ不可能だと言われています。
今回は、この2つの病気のメカニズムの違いから、なぜ誤解が生まれるのか、そして命を守るために知っておくべき「検査の真実」までお伝えします。
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そもそも「何が」違うのか?(メカニズムの違い)
最大の違いは、病気の成り立ちにあります。
胃潰瘍(良性の病気)=「えぐれる傷」

胃酸の攻撃力と胃粘膜の防御力のバランスが崩れ、自分の胃壁が消化されて深くえぐれてしまった状態です。
- 主な原因: ピロリ菌感染、鎮痛剤(NSAIDs)の副作用、ストレスなど。
- 予後: 適切な治療(薬の服用やピロリ菌除菌)を行えば、きれいに治癒します。
胃がん(悪性の病気)=「増殖する細胞」

胃の粘膜細胞の遺伝子が傷つき、がん細胞が無秩序に増殖して「こぶ」や「潰瘍」を作る病気です。
- 主な原因: ピロリ菌による慢性胃炎が最大の要因。その他、塩分の摂りすぎ、喫煙、遺伝など。
- 予後: 自然に治ることはなく、放置すれば進行・転移し、命に関わります。
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よくある誤解「胃潰瘍を放置するとがんになる?」の真相

「胃潰瘍を放っておくと、そのうちがんになる」という話を聞いたことがあるかもしれません。 しかし、医学的には良性の胃潰瘍ががんに変化することはありません。
では、なぜそのような誤解が広まっているのでしょうか? それには恐ろしい理由があります。
「がん」が「潰瘍」のふりをする
実は、胃がんの約70%は、がん細胞の中心が崩れて潰瘍のような形を作ります(これを潰瘍性病変と呼びます)。
さらに厄介なことに、胃がんであっても、市販の胃薬などを飲むと一時的に症状が和らぎ、潰瘍部分が少し修復されて「治りかけ」のように見えることがあります。 これが、「胃潰瘍だと思って治療していたが、なかなか治らないので詳しく調べたら胃がんだった」というケースの正体です。
つまり、「潰瘍ががんになった」のではなく、「最初からがんだったものが、潰瘍のふりをしていた」というのが真実なのです。
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症状だけで見分けるのは「ギャンブル」に近い
「空腹時に痛むなら胃潰瘍」といった俗説がありますが、これはあくまで傾向にすぎません。
| 特徴 | 胃潰瘍の傾向 | 胃がんの傾向 |
| 痛み | みぞおち周辺が痛む(特に空腹時や食後) | 初期は無症状が多い。進行すると持続的な痛みが出る |
| 出血 | 吐血や黒色便(タール便)が見られる | 潰瘍を伴う場合、同様に出血が見られる |
| 食事 | 痛みで食べられないことが多い | 進行すると、胃が膨らまなくなり少量で満腹になる |
| 体重 | 食事量減少により減ることがある | 原因不明の急激な体重減少が起こることがある |
特に恐ろしいのは、早期の胃がんは無症状のことが非常に多い点です。「痛くないから大丈夫」は、胃がんにおいては通用しません。
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答え合わせは「生検(組織検査)」でしかできない

では、医師はどうやって見分けているのでしょうか? バリウム検査だけでは不十分です。唯一の確実な方法は、「胃カメラ(内視鏡検査)」です。
プロの医師が見ているポイント
内視鏡で見ると、以下のような違いがあります。
- 良性の胃潰瘍: 潰瘍の形が整っており、周囲の粘膜がきれいで境界がはっきりしている。
- 胃がん: 形がいびつで、周囲のひだが不規則に切れていたり、盛り上がったりしている。
最終診断は「細胞レベル」で
見た目でも判別が難しい場合(がんが良性のふりをしている場合)、医師は「生検(バイオプシー)」を行います。 これは、内視鏡の先から小さな器具を出して、病変の組織を一部つまみ取り、顕微鏡で細胞を確認する検査です。
「細胞レベルでがん細胞がいないか確認する」。ここまでやって初めて、本当の意味での「良性・悪性」の確定診断が可能になります。
まとめ:違和感があれば迷わず消化器内科へ

今回の深堀りポイントをまとめます。
- 胃潰瘍と胃がんは「えぐれる傷」か「増殖する細胞」かという根本的な違いがある。
- 胃がんは一時的に薬で症状が改善することがあり、良性のふりをして潜伏する。
- 自己判断は危険。白黒はっきりさせるには、胃カメラで組織を調べる(生検)しかない。
「胃薬を飲んで様子を見よう」と痛みを誤魔化している時間は、がん(もしそうであれば)に進行の猶予を与えていることになります。 逆に言えば、早期に胃カメラさえ受ければ、胃潰瘍なら適切な治療で完治でき、胃がんであっても内視鏡手術などで完治が望めます。
胃の不調は体からの重要なサインです。自己判断せず、消化器内科でプロの診断を受け、安心を手に入れましょう。




