胃がんと胃潰瘍の症状の違とは?

多くの方が一度は経験する胃の痛み。しかし、「ストレスや食べ過ぎによる、ただの胃痛だろう」と自己判断して放置するのは非常に危険です。なぜなら、その胃の痛みや不快感は、深刻な病気が進行しているサインかもしれないからです。
当クリニックは「胃がんで亡くなる不幸をなくしたい」という強い思いで、日々の診療・検査に臨んでいます。
今回は、健診と内視鏡の専門家、そして働く人の健康を知り尽くした産業医の視点から、胃痛の原因となる病気、特に胃がんと胃潰瘍の症状の違いと、正確な診断のために内視鏡検査(胃カメラ)がなぜ不可欠なのかをお伝えします。
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胃痛・背中の痛みの原因は多岐にわたる

胃の不調のサインである胃痛、みぞおちの痛み、背中の痛みは、胃やその周辺のさまざまな疾患によって引き起こされます。特に、仕事や家庭で忙しい世代の方々は、ストレスや不規則な食事で胃の不調をきたしやすい傾向があります。
これらの症状は、主に以下の病気が原因として考えられます。
- 急性胃炎・慢性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 機能性ディスペプシア(FD): 内視鏡検査で器質的な異常が見られないにもかかわらず、慢性的な胃もたれや胃痛が続く状態です。
- 胆のう炎や胆石症
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胃潰瘍と胃がんの症状の違いと共通点

胃がんも胃潰瘍も、似たような症状を示すことがあり、症状だけでどちらの病気かを判断することは非常に困難です。それぞれの症状の違いと共通点は以下の通りです。
痛みの特徴
胃潰瘍・十二指腸潰瘍では、比較的明確な痛みを伴うことが多く、キリキリとした鋭い痛みや灼熱感として現れます。一方、胃がんは初期には症状がほとんどないことが多く、進行すると鈍く持続的な痛みや強い腹痛が現れることがあります。
痛みのタイミング
胃潰瘍では食事中や食後にみぞおちの痛みが増すことがあります。十二指腸潰瘍の場合は空腹時や夜間に悪化し、食事で一時的に軽減することが多いのが特徴です。胃がんの場合、痛みのタイミングと食事の関連性はあまり明確ではありません。
その他の症状
胃潰瘍・十二指腸潰瘍では、吐き気、吐血、黒い便(タール便)が見られます。進行すると背中の痛みを訴えることもあります。
胃がんでは、食欲がない、理由なく体重が急激に減少した、といった症状に加え、吐き気、進行した場合の黒い便や貧血などが挙げられます。
共通する症状

両方の病気に共通する症状としては、胃の痛み(上腹部痛、みぞおちの痛み)、吐き気、食欲不振、体重減少、黒い便、貧血などがあります。
特に胃がんの初期には症状が乏しいため、症状が現れた時点でがんが進行している可能性も否定できません。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が原因で出血すると、血液中の鉄分が胃酸と混ざり酸化することで、コールタールのように黒く粘り気のあるタール便として現れることがあります。黒い便が出た場合は、上部消化管からの出血を示唆しており、すぐに医療機関を受診する必要があります。
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当院が胃カメラを重要視する理由:がんリスクの早期発見と的確な診断

症状が軽微であっても、胃痛や胃の不調を放置することは、重大な病気の見逃しにつながり危険です。
院長は、「胃がんについては、早期発見からピロリ菌除菌によるリスク低減の時代へ変わった」と考えています。その鍵を握るのが、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)です。
ピロリ菌に感染すると、慢性的な胃の炎症が起こり、これが萎縮性胃炎へと進行します。この萎縮性胃炎の状態が、胃がんのリスクを非常に高くするのです。
早期発見・正確な診断のために「胃カメラ検査」を
胃がんは医学の進歩により、早期に発見できれば予後が非常に良い病気です。胃潰瘍も、進行して胃壁に穴が開く(穿孔)と緊急手術が必要になることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。

これらの胃の病変を正確に診断し、適切な治療方針を決定するためには、内視鏡検査(胃カメラ)が不可欠です。
- 粘膜を直接確認できる: 胃カメラは、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察できる唯一の検査です。バリウム検査では分かりにくい微細な色の変化や粘膜の凹凸、小さな病変も捉えることが可能です。
- AIによる高精度診断: 当クリニックでは、先進のAI技術を搭載した内視鏡システムを導入しています。医師の目とAIのダブルチェックにより、見逃しのリスクを限りなく低減し、診断の精度をさらに高めています。
- 正確な診断と治療への直結: 検査中に病変が疑われる部位が見つかった場合、その場で組織の一部を採取し、がん細胞の有無や炎症の程度を確定診断(生検)できます。
- ピロリ菌対策: 胃カメラ検査時にピロリ菌感染の有無を確認でき、陽性と判明した場合は、適切な除菌治療を行うことで胃がんのリスクを大幅に低減できます。
- 経験豊富な専門家による苦痛の少ない検査: 当クリニックでは、患者様の負担を軽減することに徹底的にこだわっています。院長は10,000症例以上の経験を持つ経鼻内視鏡(鼻からのカメラ)や、ご希望に応じた鎮静剤(麻酔)の使用で、苦痛を最小限に抑えた検査を提供します。
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気になる症状があれば、仕事や生活のことも含めてご相談ください

胃痛、みぞおちの痛み、背中の痛みなどの症状は、単なる胃炎から胃潰瘍、そして胃がんまで、様々な原因が考えられます。
症状だけで自己判断せず、特に食欲不振や体重減少、吐き気、または黒い便(タール便)などの症状が続く場合は、速やかにご相談ください。
院長は、人間ドック健診専門医であり、産業医として働く方々の健康を長年サポートしてきました。そのため、ただ病気を診るだけでなく、あなたの仕事や生活習慣まで考慮した上で、実現可能な治療計画や改善策を一緒に考えます。
院長のモットーは「何でも気軽に話しかけて相談してもらえること」。『こんな些細な症状で受診していいのかな』などと悩まず、ご自身の健康を守るために、ぜひ一度お気軽にご相談ください。




