『スキルス胃がん』はなぜ見つけにくい?
神戸市灘区のきなが内科・内視鏡クリニックです。当院では、地域の皆様の健康維持のため、消化器疾患に関する専門的な情報発信を行っています。
胃がんは日本人にとって罹患率の高い疾患の一つですが、その中でも特に注意が必要なのが「スキルス胃がん」です。このタイプのがんは、その特性から発見が非常に難しく、進行した状態で見つかることが少なくありません。今回は、なぜスキルス胃がんが見つけにくいのか、その初期症状、そして早期発見のために胃カメラによる精密検査がいかに重要かについお伝えします。
スキルス胃がんとは?なぜ見つけにくいのか?
スキルス胃がんは、胃の壁全体に硬く厚く広がる特徴を持つ胃がんの一種です。一般的に、多くのがんは胃の粘膜表面に隆起や陥没といった目に見える変化を伴って発生しますが、スキルス胃がんは、粘膜の表面には明らかな病変を形成しにくいという特徴があります。がん細胞が胃の壁の奥深く、特に粘膜の下の層に浸潤し、びまん性(広範囲に散らばるように)に広がっていくため、通常の胃がんのように早期の段階で内視鏡で発見することが非常に困難とされています。
このため、進行しているにもかかわらず、内視鏡検査ではわずかな粘膜の変化しか捉えられない場合があり、熟練した医師による精密な観察が不可欠となります。
スキルス胃がんの初期症状に注意
胃がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がないことが多い病気です。これはスキルス胃がんも同様であり、特に早期の段階では特徴的な症状が乏しいため、発見を遅らせる大きな要因となります。
しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。これらの症状は、スキルス胃がんに限らず、他の胃の病気でも見られるものですが、スキルス胃がんの場合、急速に進行することがあるため、これらのサインを見逃さないことが重要です。
- ・胃の不快感、もたれ、膨満感(食事が少ししか食べられないのに、胃が張った感じがする)
- ・食欲不振、食事がとれない
- ・体重の減少(急激な体重減少)
- ・吐き気や嘔吐
- ・みぞおちの痛み(前回のブログ記事で触れたような一般的な胃の痛みも含むが、スキルス胃がんでは必ずしも初期に強く現れるとは限らない)
- ・黒い便が出る、貧血を指摘される(進行した場合)
特に、これまでなかった胃の不調が続く場合や、急激な食欲不振、体重減少が見られる場合は、放置せずに早めに消化器内科を受診することが勧められます。
早期発見には胃カメラ検査が不可欠
胃がんは医学の進歩により、早期に発見できれば予後が非常に良い病気です。しかし、スキルス胃がんのように発見が難しいタイプの場合、定期的な胃カメラ(上部内視鏡)検査がその早期発見に不可欠となります。
きなが内科・内視鏡クリニックでは、患者様の負担を軽減しつつ、精密な検査を提供しています。
- ・苦痛を抑える経鼻内視鏡検査:当院では、鼻から挿入する細径の内視鏡を使用することで、舌の付け根に触れにくく、嘔吐反射が起こりにくいというメリットがあります。これにより、患者様はリラックスして検査を受けることができます。
- ・AIによる画像診断支援システム「CAD EYE」:当院の内視鏡システムには、富士フイルムメディカル社製のAI診断支援システム「CAD EYE」を搭載しています。このAIは、膨大な臨床データから深層学習を活用して開発され、一見分かりにくいとされる粘膜の病変も識別し、胃がんや食道がんなどの早期発見をサポートします。スキルス胃がんのような、表面変化が乏しい病変の発見にも寄与することが期待されます。
- ・豊富な経験を持つ医師:当院長は長年、内科医・内視鏡医として勤務し、ピロリ菌感染診断に基づく胃がんリスクを考慮した胃がん検診に携わってきました。ピロリ菌感染は胃がんの最も大きなリスク因子の一つとされています。ピロリ菌感染の有無を確認し、陽性の場合は除菌治療を行うことで、胃がんのリスクを低減することができます。
胃カメラ検査では、食道がん、胃がん、胃腺腫、十二指腸がん、十二指腸腺腫、胃潰瘍、急性胃炎、慢性胃炎、胃ポリープ、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など、様々な消化器疾患の発見が可能です。
少しでも気になる症状があればご相談ください
スキルス胃がんの早期発見は非常に難しいですが、早期発見・早期治療が、その後の治療成績を大きく左右します。 「なんとなく胃の調子が悪い」「食欲がない」「体重が減ってきた」など、どんな些細な症状でも、自己判断せずに医師に相談することが大切です。特に、ピロリ菌感染を指摘されたことがある方や、家族に胃がんの既往がある方は、症状の有無にかかわらず定期的な胃検診を受けることを強くお勧めします。
きなが内科・内視鏡クリニックでは、皆様が安心して検査を受けられるよう、苦痛の少ない内視鏡検査と先進的な診断技術を提供しています。ご自身の健康を守るために、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。