「先日、大腸ポリープを切除したけれど、いつから仕事に戻れるの?」
「運動はどのくらい休めばいい?」
「食事は何に気をつければ?」
「便に血が混じっている気がするけど大丈夫?」
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)でポリープが見つかり、その場で切除する日帰り手術は、体への負担が少ない治療法ですが、切除した部分は傷になっているため、術後の生活には注意が必要です。無理をしてしまうと、出血などの合併症を引き起こすリスクがあります。
この記事では、大腸ポリープを切除した後の生活で特に気をつけたいポイントを、仕事復帰の目安、運動の再開時期、食事の注意点、そしてご自身の体調を知るバロメーターとなる「便」のチェック方法まで、詳しく解説します。安心して回復期間を過ごすために、ぜひ参考にしてください。
ポリープ切除後の基本的な考え方
まず、大腸ポリープを切除した後は、以下の点を理解しておくことが大切です。
- ・切除部位は「傷」であること: ポリープを切除した大腸の粘膜は、一時的に傷ついた状態です。そのため、術後しばらくは出血や、まれに穿孔(腸に穴が開くこと)といった合併症のリスクがあります。
- ・回復期間には個人差があること: 回復にかかる時間は、ポリープの大きさや数、切除方法(電気を使わないコールドポリペクトミーか、電気を使うEMRなどか)、そしてご自身の体力や回復力によって異なります。
- ・医師の指示が最優先であること: ここで紹介するのは一般的な注意点です。ご自身のポリープの状態や体調に合わせて、医師や看護師から個別の指示があるはずです。必ずその指示に従ってください。
仕事復帰はいつから?
仕事への復帰時期は、ポリープ切除の有無や、検査時に鎮静剤を使用したか、そして仕事内容によって異なります。
デスクワークの場合
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- ポリープを切除しなかった場合や、鎮静剤を使用しなかった場合は、体調に問題がなければ翌日から復帰可能なことが多いです。
- ポリープを切除した場合や鎮静剤を使用した場合は、翌日から可能なことが多いですが、無理は禁物です。倦怠感やお腹の張りが残ることもありますので、少しでも体調に不安があれば休養しましょう。
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力仕事・身体を使う仕事の場合
- 立ち仕事、重い物を持つ、体を大きく動かすなど、お腹に力が入りやすい仕事の場合は、ポリープ切除後は特に注意が必要です。出血のリスクを考慮し、最低でも3日間、できれば1週間程度は休むか、デスクワークなど負担の少ない業務に一時的に変更することを検討しましょう。クリニックによっては、より厳しい安静期間(例:3日間は外出も不可、力仕事は7日間休みなど)を指示される場合もあります。必ず医師の指示を確認してください。
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鎮静剤を使った場合の注意点:
- 鎮静剤を使用した場合は、検査当日は眠気や判断力の低下が残ることがあります。車の運転やバイク、自転車の運転、危険な作業は絶対に避けてください。翌日以降、ご自身の体調を確認しながら仕事に復帰しましょう。
運動はいつから再開できる?
運動の再開も、焦らず段階的に進めることが大切です。
- ・安静期間(当日~3日目):
- 切除当日は安静に過ごしましょう。翌日以降も、特に最初の3日間は出血のリスクが比較的高いため、できるだけ安静を心がけ、激しい運動は避けてください。
- ・軽い運動の開始時期(3~4日目以降):
- 体調が良ければ、術後3~4日目頃から、ウォーキングや軽いストレッチなど、体に負担の少ない運動から少しずつ再開できます。ただし、30分以上の連続歩行は、もう少し様子を見てから(1週間程度経ってから)が良いでしょう。
- ・激しい運動・腹圧のかかる運動を避ける期間(最低1週間~2週間):
- ジョギング、ゴルフ、テニス、水泳、ジムでのトレーニングなどの激しい運動や、重い物を持つ、お腹に力を入れる(いきむ)といった腹圧のかかる行為は、少なくとも1週間、できれば2週間程度は避けましょう。
- ・運動再開時の注意点:
- 運動を再開する際は、必ず体調を確認しながら、無理のない範囲で行ってください。少しでもお腹に違和感や痛みを感じたら、すぐに運動を中止し、必要であれば医師に相談しましょう。
食事で気をつけること
切除後の腸を休ませ、回復を助けるためには、食事の内容にも配慮が必要です。
- ・当日~1週間程度の食事:
- 消化の良い食事を心がけましょう。おかゆ、うどん、そうめん、白身魚、豆腐、鶏ささみ、卵、ヨーグルト、プリン、柔らかく煮た野菜(大根、かぶ、にんじんなど)がおすすめです。
- 食事の量は腹八分目にとどめ、食べ過ぎないようにしましょう。
- ・避けるべきもの(最低1週間):
- 刺激物: 唐辛子などの香辛料、辛い食べ物、炭酸飲料。
- 高脂肪食: 揚げ物、天ぷら、肉の脂身、ラーメン、ファーストフードなど。
- アルコール: 血行を促進し出血リスクを高めるため、最低1週間、できれば2週間は禁酒しましょう。アルコール度数の低いものでも避けてください。
- コーヒー: カフェインも刺激になることがあるため、1週間程度は控えるのが望ましいです。
- 消化の悪い食品: 玄米、きのこ類、海藻類、ごぼうなどの繊維の多い野菜、こんにゃく、豆類など。
- ・1週間後以降の食事:
- 体調を見ながら、徐々に普段の食事に戻していきます。ただし、急に脂っこいものや刺激物をたくさん食べるのは避け、引き続き暴飲暴食には注意しましょう。
便の色や状態をチェック!異常時のサインは?
術後の便の状態は、腸内の回復具合を知るための大切なサインです。毎日チェックする習慣をつけましょう。
- ・便の観察の重要性:
- 切除部位からの出血がないか、感染の兆候がないかなどを確認するために、排便時には必ず便の色や状態を確認しましょう。
- ・術後の正常な変化(心配ないことが多いもの):
- 一時的な便秘: 検査前の下剤の影響や、術後の食事内容の変化で、2~3日排便がないこともあります。水分をしっかり摂り、消化の良い食事を続けていれば、多くの場合自然に改善します。ただし、続く場合は医師に相談しましょう。
- 軟便・下痢: 食事内容の変化や腸内環境の乱れで、一時的に便が緩くなることもあります。
- 少量の血液付着: 排便時にティッシュペーパーに少量の血液が付着する、便の表面に少し血が付く程度であれば、数日で治まることが多いです。
- 便の色: 検査時に青い色素を使った場合、数日間、便や尿が青~緑色になることがありますが、心配ありません。
- ・すぐに連絡・受診が必要な異常サイン:
- 大量の出血: 便器の水が真っ赤になる、レバーのような血の塊が出る、出血が止まらない。
- 黒い便(タール便): コールタールのような粘り気のある黒い便は、上部消化管または大腸からの出血が古い血液として排出されている可能性があります。
- 強い腹痛: 我慢できないほどの強い腹痛が続く、または徐々に悪化する。
- 発熱: 38度以上の熱が出る。
- 嘔吐、寒気
- 貧血症状: 顔面蒼白、冷や汗、ふらつき、息切れなど。
これらの症状が見られた場合は、合併症(出血、穿孔、感染など)の可能性があります。自己判断せず、すぐにポリープを切除した医療機関に連絡し、指示を仰いでください。 夜間や休日で連絡がつかない場合は、救急外来を受診する必要がある場合もあります。
その他、日常生活での注意点
- ・入浴: 切除当日から2~3日はシャワー浴のみにしましょう。湯船に浸かるのは3~4日目頃から可能ですが、長湯は血行を良くしすぎるため、1週間程度は避けてください。サウナも同様に1週間程度は控えましょう。
- ・運転: 鎮静剤を使用した場合は当日の運転は禁止です。切除当日は体調も万全でない可能性があるため、運転は控えるのが安全です。
- ・旅行・出張: 万が一、出血などの合併症が起きた場合にすぐに対応できるよう、飛行機での移動や遠方への旅行・出張は、最低1週間、できれば2週間程度は避けましょう。
- ・性行為: 体位や動きによって腹圧がかかる可能性があるため、最低1週間は控えましょう。腹痛や出血などがなければ、術後1~2週間を目安に無理のない範囲で再開できますが、違和感があれば中止し、不安な場合は医師に相談してください。
- ・喫煙: 喫煙は血行に影響し、傷の治りを遅らせる可能性があるため、この機会に禁煙を検討するのも良いでしょう。少なくとも回復期間中は控えることをおすすめします。
大腸ポリープ切除は、多くの場合日帰りで可能な負担の少ない治療ですが、術後の数週間は、切除した部分が回復するための大切な期間です。今回ご紹介した注意点を守り、ご自身の体調をよく観察しながら、無理のない生活を心がけてください。
特に、仕事の再開時期や運動制限、食事内容については、切除したポリープの状態によって医師からの指示が異なる場合があります。自己判断せずに、必ず医師や看護師の指示に従いましょう。
術後の生活で不安なことや、気になる症状があれば、遠慮せずに医療機関に相談してください。そして、ポリープは再発することもあるため、切除後も医師の指示に従って定期的な大腸内視鏡検査を受けることが、将来の大腸がん予防のために非常に重要です。